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The SHINGO Novel
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こんにちは、SHINGOです。
このコーナーでは、僕の書いている小説をご紹介していきます。ジャンルとしてはライトノベル系で、読みやすい形で制作しています。ぜひ、楽しんでいってください☆
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ハッピーベルのハッピー通信2

2006/06/11 22:45
 こんばんわ☆ 今日で二度目の登場。幸せ妖精ハッピーベルで〜す! みんな、元気にしてたかな? これから雨が多くなる季節だけど、憂鬱な気分もボクの幸せ話で吹き飛ばしてあげるね!
 じゃあ早速今日の幸せ話をするね。街を散歩していた時の話なんだけど、ボクの友だちが募金活動のボランティアをしてたんだ。ボク、すごく感心しちゃって、募金してあげたんだ。それから少し話し込んだんだけど、その時友だちがトイレに行きたいって言い出したんだ。だからボク、その間だけ仕事を変わってあげる事にしたの。
 そしたら少しして買い物帰りのおばあさんが通りかかって、募金してくれたの! ボク、すごく嬉しくなっちゃって。でもそれだけじゃなくて、おばあさん頑張ってねって言って、ボクにおまんじゅうをくれたんだ。やったー! ボランティアしたおかげで、おまんじゅうまでもらっちゃった! ボクってなんて幸せなんだろう!
 どうだったかな、ボクの幸せ話は。これでみんなも、幸せな気分になれたかな? いい事をするって素敵な事だね。みんなもボランティア精神は大切にね。じゃあそろそろボクは帰るね。また今度幸せ話をしてあげるから、楽しみにしててね。じゃあね〜!
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ハッピーベルのハッピー通信1

2006/05/31 13:56
 こんにちは☆ ボクの名前はハッピーベル。幸せ妖精ハッピーベルで〜す!
 最近いいことないなぁっていうみんなのために、ボクが感じた幸せ話で幸せな気分をわけてあげるために、妖精界からやってきたんだ。ボクの事、ヨロシクね!
 じゃあ早速今日の幸せ話をするね。実はボク、朝起きるのがすごく苦手なんだ。目覚ましかけてもすぐ二度寝しちゃって寝坊するからもう大変。学校は遅刻して先生には叱られちゃうし、いい事ないんだ。
 でもこの前はちょっと違ったの。目覚ましが鳴って目が覚めて、またすぐに二度寝しそうになったところまでは一緒だったんだけど、その時電話がかかってきたの。その電話は学校からの連絡網で、今日は大型台風が近づいてるから学校は休みになるんだって! やったー、学校が休みになるから思いっきり二度寝が出来る! ボクってなんて幸せなんだろう!
 どうだった、今日のボクの幸せ話は。これでみんなも、幸せな気分になれたかな? やっぱり朝は二度寝する時が一番気持ちいいし、幸せな時間だよね。ボクも二度寝するのは大好き☆
 じゃあそろそろボクは帰るね。また今度、幸せな話をしてあげるから楽しみにしててね。じゃあね〜! 
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詩 守れない約束

2006/04/09 21:26
いつの間にか
私は守られていた
私が守るはずだったのに
立場は逆転していた

彼の事を守ってあげて
大切な人が残した
最後の願い
叶えるって約束したのに……

私が気付かないうちに
あなたは強くなっていた
私が気付かないうちに
私は弱くなっていた

ごめんなさい……
もう約束は守れない
それどころか
あなたの大切な人を奪おうとしてる

こんなはずじゃなかった
でももう気持ちは止まれない
あなたの代わりに
彼に甘えていいですか……
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詩 笑顔が好きだから

2006/04/02 14:46
泣かないで
悲しくなんてないから
いつまでも
笑顔でいてほしい

ずっとそばにいてあげたかった
あなたは寂しがりやだから
でもあなたは一人じゃない
たくさんの仲間がいる

お願い
彼の事を守ってあげて
それが私の
最後の願い

私の大切な人
あなたには幸せになってほしいから
いつまでも私に
縛られないでほしい

私なら大丈夫
けして泣いたりしないから
あなたのそばにいるけど
あなたの自由が私の幸せだから

あなたは私に
幸せな時間をくれた
短い時間だったけど
それでも十分だったから

今度は私が
あなたの幸せを応援してあげる
私には時間が短かったけど
あなたには未来があるから

私が見るあなたの最後の顔
涙がこぼれて
それでも笑おうとする
変な笑顔

私のために
無理してくれてる
それなのに
私は笑えてるのかな?

悲しくなんてないはずなのに
こうなることは
最初から分かっていたはずなのに
目が熱くなるのはなぜなんだろう?

泣くのは嫌いだった
涙は心を苦しめるから
たとえどんなことがあっても
笑顔が好きだったから

私はもう笑えないけど
あなたは忘れないで
私の分まで
笑顔でいて

もし奇跡が起きるなら
もう一度あなたに会いたい
あなたの心からの笑顔を
もう一度見たいから……
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詩 天使の微笑み

2006/03/26 21:34
いつも笑顔を浮かべてる
どんなに傷つけられても
どんなに虐げられても
大丈夫だと微笑んでる

誰かのためについた嘘
他人を守るために
他人をかばって
悪役を買って出た

本当は何も悪くないのに
その心は
天使のように澄みきってるのに
誰もその事に気付かない

でもそれは
あなた自身が望んだこと
そうなることで
他の誰かを守れるから

だけどその引き替えに
あなたはたくさん傷ついた
背負わなくていい傷を
たくさん付けられた

どうしてそんなに
他人の事を気遣うの?
あなたの受けた傷は
誰が癒してくれるの?

大丈夫なはずはない
周りの信頼を失って
身も心も
ひどくぼろぼろになってるはずなのに

もういいから
これ以上無理しなくていいから
せめて私の前だけでも
素直になってほしい

忘れないで
あなたを理解している人も
いるって事を
私の前では
泣いたっていいから……
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☆★こいつはホントに名探偵!?★☆(最終回)

2006/03/17 00:05
 8、新たな出発

 渡辺が逮捕されてから一週間がすぎた。麻薬組織の残党も、徐々に捕まりつつある。このままいけば、壊滅も時間の問題だろう。
 この一件で活躍した鋭二たちのことは、公になることはなかった。鋭二たちは証拠のテープを警察署の前に置き去りにしその場から姿を消したので、警察側も誰がそのビデオを撮ったのか分からないのだ。
 一方腕を撃たれた鋭二は、病院で手当てを受けて事なきを得ていた。やはり弾は腕をかすめていっただけなので、それほどひどい状態ではなかったのだ。
 鋭二は達成感に浸っていた。仲間を殺され、組織を抜けても追い続けてきたこの事件。新たな仲間とともに、命がけの戦いを制して勝利を掴んだのだ。それまでの長い道のりも、今となってはいい思い出だ。
 そして鋭二は、再びみんなを探偵事務所へと集めていた。
「違う町で探偵事務所を作る?」
 鋭二はみんなに、そう告げた。
「そうさ。本当は渡辺を逮捕に追い込んだらもう探偵業から足を洗おうって思っていたんだけど、やっぱり自分の能力を眠らせてしまうのはもったいない気がしてきてね。て言っても、また命がけの仕事がしたいってわけじゃないんだ。おれがやりたいのは、普通の探偵がやるようなちっぽけな仕事さ。浮気調査とか、家出娘の捜索とか、そんな感じのね」
「そのために自分だけの事務所を作るってわけか。でも……お前に普通の仕事なんてできるのか?」
 少女誘拐未遂、民家のドアを蹴破り不法侵入、民間人を脅迫、警察相手に発煙筒……。
 猛は今まで鋭二がやらかしためちゃくちゃぶりを思い浮かべ、心配げに尋ねた。
「どうゆう意味だそれは? おれは超一流の名探偵なんだぞ。有名になったっていう話は嘘だけど、そのことは本当だ。だいたい、おれの有能ぶりはもうさんざん見せつけてやっただろう」
 鋭二は不機嫌気味に口をとがらせる。
「優れた能力を持っている分、お前の常識は人よりずれてるから心配なんだよ」
「でも沢村。普通の仕事するにしろ、なんでその場所を他のところにするんや? 別にこの町でやってもええやろ」
 吉崎は不思議そうに首を傾げた。
「おれは裏世界との関わりを断ち切って、これから新しい人生を送っていくことに決めたんだ。その第一歩を踏み出すのが、裏組織での仕事を引きずったこの町というのはなんとなく嫌な気がしてね。だから今まで行ったことのない、なにも知らない土地で最初の一歩を踏みたいんだ」
「ゼロからのスタートってわけか。なるほどな。悪い考えやないと思うで」
「お兄ちゃん。また、会えるよね? またあたしと一緒に遊んでくれるよね?」
 リティは寂しげな瞳で、鋭二を見上げた。
 鋭二はそんなリティに微笑みかけ、頭を優しく撫でてあげた。
「ああ、向こうで落ち着いたら、必ず戻ってきてリティちゃんに会いに行くよ。そしたら今度こそ、遊園地に遊びに行こうね」
 するとリティはぱあっと顔を輝かせた。
「うん! 約束だよ!」
 リティは元気に答えると、小指を差し出し鋭二と指切りをかわした。
「鋭二、こっちに戻って来たならおれにも会いに来いよ。またBGSで勝負しようぜ。今度は鋭二も要領が分かってると思うから、きっといい勝負になると思うぞ」
「今度やるときは、ステージのなかを動き回ってたっぷりと翻弄してやるからな」
 鋭二は小太刀に応じるように、笑みを浮かべた。
「沢村、戻ってくるのは勝手だけど、もうおれを変なことに巻き込まないでくれよ」
 猛は冗談めかして言った。
「わかってるよ。お前に限らず、もうこれ以上みんなに迷惑をかけるつもりはないから。みんな本当に、今までありがとう」


 三日後、鋭二は次に自分が住む場所へと旅立っていった。過去の苦い思い出からの呪縛を断ち切り、鋭二の胸は新しい気持ちでいっぱいだった。
 しかし、鋭二の荷物の中には裏世界で手に入れた発信器だの発煙筒などが、しっかりと詰められていた。本人はたいして自覚していないが、鋭二が裏世界とのつながりを完全に断ち切ることは、まだまだ先のことなのかもしれない。
     こいつはホントに名探偵!? 完
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☆★こいつはホントに名探偵!?★☆(第81回)

2006/03/15 20:21
7、因縁の決着(第11回)

「なっ!?」
 鋭二たちは愕然とした。渡辺は銃を取り落としている。撃たれた弾は、誰にも当たっていなかった。
「貴様! まだそんな力がっ!」
 渡辺は憎々しげに小太刀を睨みつけた。小太刀は倒れた姿勢のまま、ゴムスタン銃で渡辺の手元を撃ったのだ。
「正義の力を……なめるよ……!」
 小太刀は苦痛に顔を歪ませながらも、かすれる声でそう呻いた。なおも震える手で銃を渡辺に向け、撃とうとしている。
「くたばりぞこないが! さっさと死ね!」
 渡辺は小太刀の胸を踏みつけようとした。
 そこに、
「させるかっ!」
 鋭二が腕に走る激痛を我慢し、飛び出した。渡辺は鋭二に気づき、すぐに迎え撃つ姿勢をとる。
 その時、二発目のゴムスタン弾が渡辺の横顔に命中した。
「ぐっ!」
 渡辺の体勢が大きく崩れた。同時に鋭二が渡辺の懐に飛び込む。鋭二は渡辺の胸元と腕を掴んだ。
 そして、
「くらえっ!」
 気合いとともに、渡辺の身体を思い切り投げ飛ばした。柔道の一本背おいだ。
 渡辺はなす術もなく宙を浮く。刹那、
「がはっ!?」
 背中を強打し、渡辺は今度こそ完全に意識を失った。
「小太刀っ!」
 鋭二はそれ以上渡辺には構わず、小太刀のそばにしゃがみ込んだ。吉崎たちも駆け寄ってくる。
「大丈夫か! 小太刀!」
 鋭二が呼びかけると、小太刀は思いのほかあっさりと身を起こした。
「ああ、大丈夫だ」
「えっ……?」
 鋭二がきょとんとしていると、小太刀は上着を脱いで見せた。
「なっ!?」
 鋭二はその下にあったものを見て愕然とした。小太刀は防弾チョッキを着込んでいたのだ。しかも血のりつきである。
「さすがに銃を持った相手と戦うのに、なんの装備もしないのは自殺行為だからね。血のりをつけたのは、相手を油断させるためさ。実際、奴はおれを撃ってから、ろくにおれのほうに注意を払ってなかったろ?」
 小太刀は得意げに説明した。鋭二は力が抜けるのを感じた。
「まったく……心配させやがって……」
 とその時、鋭二はあることを思いだした。
「そうだ! たしかこの周辺にはまだ渡辺の仲間が潜んでいるんだ! 早く逃げないと!」
 鋭二は慌てるが、小太刀たちは落ち着いていた。
「心配はいらないぜ。工場の周りをちょろちょろしてた奴らなら、ここに来る前におれたちがしとめといたから」
「なんだって!? お前ら、そんなことして大丈夫だったのか?」
「大丈夫や。一、二発奴らは発砲してきたけど、全く当たらんかったし。それに奴らのほとんどが、茂の奇襲に倒れたしな」
 それを聞いて、鋭二はただア然とするばかりだった。
「……たいしたものだよ、お前らは」
「でも、たしかに長居するのは無用だな。鋭二も病院に行って、ちゃんと手当をしないとならないだろうし」
 小太刀に言われ、鋭二は自分が撃たれていたことを思い出した。
「うう……腕が痛い」
「おいおい、大丈夫なんか? とにかく、さっさと行くで」
 吉崎の言葉で、みんなはようやくその場から動き出した。
 しかし彼らは気づいていなかった。逃げる自分たちの背中に、銃口が向けられていることを。その人物は渡辺ではない。意識を取り戻した、氷室だった。
「くっ、あいつら。このまま逃げられると思うなよ」
 氷室はとりあえず鋭二の背中を狙った。そして、
 パコン!
 乾いた音とともに、氷室は崩れ落ちた。意識を失ったみたく、身動き一つしていなかった。氷室の悪行は、未遂のまま終わった。


 鋭二たちが去ったあとで、塀側の倉庫の角から気絶した氷室を見つめ、毒づく影が一つあった。
「まったく。様子を見に来てみれば危うく背後から撃ち殺されるところだったんだからな。世話の焼ける奴らだぜ。それにしても、これって結構武器になるんだな。ま、これも俺の技術のたまものかな」
 戦う力がないと言っておきながら結局鋭二が心配になり、ここまで駆けつけたその影は、自分の手柄に満足げに頷いた。
 氷室のそばには、一個のテニスボールが転がっていた。
                                                      7、因縁の決着 終了



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☆★こいつはホントに名探偵!?★☆(第80回)

2006/02/28 23:58
7、因縁の決着(第10回)

 事態に気づいた鋭二たちは慌てて振り返った。
「小太刀っ!?」
 鋭二は悲鳴じみた声を上げた。小太刀は地面の上で、身もだえしている。まだ死んではいない。
 鋭二たちはすぐに駆け寄ろうとしたが、身を起こした渡辺に銃を向けられ、その動きを止めた。
「渡辺……」
「……さっきのは、だいぶ効いたぞ。だが、俺を完全に倒すにはまだ威力が足りなかったな。倒れたそばに、銃が落ちていて運が良かったよ。おかげで早速一人を殺せたんだからな」
 渡辺は狂気めいた笑みを浮かべた。小太刀の胸は真っ赤に染まっている。撃たれたところは心臓のあたりだ。放っておけば間違いなく死ぬだろう。
「今まで倒れていたのは、演技だったのか?」
 鋭二は蒼白になった顔で、苦々しく呻いた。
「今ごろ気づいたのか。おめでたい奴らだな。この工場の周りには、俺の仲間がまだ何人か待機している。今の銃声ですぐに駆けつけてくるだろう。もうお前らに勝ち目はない。だが俺の質問に答えるのであれば、命だけは助けてやってもいいぞ」
「ぐっ……」
 鋭二は困惑した。渡辺の質問に答えるつもりなど毛頭ない。だが相手の要求に応じなければ、ここにいる全員が殺されてしまうだろう。鋭二は自分が殺されても、他の人間までは巻き込みたくなかった。
「どうした。俺の質問に答えるつもりはないのか? だったら、次はそのガキでも殺しておくかな」
 渡辺は銃口をリティに向けた。とたん、鋭二は慌てて叫んだ
「ま、待て! 喋る! 喋るから待ってくれ!」
 鋭二のその言葉を聞き、渡辺は引き金を引く手を止めた。
「最初からそう素直になっていればよかったものを」
 渡辺は会心の笑みを浮かべた。
「お、おいええんか沢村! あんな奴に、秘密喋ったりして」
 吉崎は鋭二に呼びかけた。鋭二は重々しく首を縦に振る。
「……いいんだ。おれはもう、これ以上仲間が死ぬのを見たくないんだ」
 鋭二の頬には涙がつたった。
「お前でも泣くことがあるんだな。まさかお前がそんなに甘い奴だったとは思わなかったぞ」
 渡辺は嘲笑を浮かべた。
「お前のような奴には、分からないんだ。仲間がどれだけ大切なのかをな」
「そんなもの、分からなくても結構だ。それよりも、そろそろ本題に入るぞ。お前の組織の場所はどこだ。素直に喋らなければ、即座に引き金を引くぞ」
 渡辺の銃口は、リティに向いたままだった。鋭二は意を決したように話し出す。
「おれたちの組織の場所は……」
 ズキューーーーーーン!
 渡辺の銃から弾が発射された。鋭二が話している途中だった。
                                                                                                          第10回終了
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☆★こいつはホントに名探偵!?★☆(第79回)

2006/02/27 22:28
7、因縁の決着(第9回)

「うっ!」
 うめき声を上げ、銃は転々と地面を転がっていった。渡辺はさっきまで銃を持っていた手を押さえている。引き金を引く直前、なにかが渡辺の手に命中したのだ。
「誰だ!」
 渡辺はなにかが飛んできた方向に目を向けた。そこは塀がたっているところだ。
 そしてその塀の上には人影が見受けられた。銃を手にし、構えている。
 次の瞬間、
「ぐあっ!」
 苦鳴を上げ、渡辺は大きくのけぞって倒れ込んだ。続けてそばにいた氷室も同じ末路を辿る。倒れた二人のそばには、ゴムスタン弾が転がっていた。
 鋭二がきょとんとしていると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「危ないところだったな、鋭二」
 銃を撃った人物は、塀から飛び降りそう言った。鋭二は身を起こしてその姿を確認し、愕然とする。
「こ、小太刀!? どうしてここに……?」
「俺もいるで」
 さらに塀の上には、新たな人影が現れる。その背中には少女が乗っていた。
「助けに来たよ、お兄ちゃん」
「吉崎にリティちゃんまで……。どうゆうことなんだ?」
 鋭二は困惑する一方だった。鋭二はみんなにこの日のことは話していない。こんなところに、みんなが現れるはずはないのだ。
 三人は鋭二のそばまで近づくと、リティが説明した。
「おじいちゃんがね、教えてくれたの。お兄ちゃんがここで悪い人と戦うから、助けに行ってやれって」
「黒田博士が? でも、黒田博士は余計な介入はしないって……」
 自分で言いかけて、鋭二は理解した。
 一度納得したふりをして相手を裏切る。黒田は鋭二がみんなにしたのと同じことをしたのだ。そう思うと、鋭二は思わず皮肉げに笑った。
「やってくれるな、黒田博士も。でも、そのおかげで本当に助かったよ。みんな、わざわざありがとう」
 鋭二は深々と頭を下げた。それを見て、吉崎は嘆息する。
「まったく、結局俺らがいないと駄目なんやからな。ま、確かにシャレんならん戦いやったから、お前が俺らのこと気遣う気持ちはわかるんやけどな。ほんまなら文句をたっぷり浴びせたいとこなんやが、お前のケガに免じて見逃したる。とりあえずは、お前のケガの手当てをせんとな」
 吉崎はポケットからハンカチを取りだし、撃たれた鋭二の腕に縛り付けた。
「すまない、吉崎」
「気にすんな。ケガ人を手当てするのは当然のことや」
「お兄ちゃん、痛くない?」
 リティは心配そうに鋭二を覗き込んだ。
「弾はかすめただけだからね。全然たいしたことはないよ」
 鋭二がそう答えたころ、手当てが終わった。
「沢村、立てるか?」
「ああ、大丈夫だ」
 鋭二は吉崎の手を借り、立ち上がった。
「あと、吉崎。すまないが、あそこのコンテナの陰にビデオカメラがおいてあるんだ。とってきてくれないかな」
「ああ、ええで」
 吉崎はコンテナのほうに向かっていった。
 一方で、小太刀は渡辺の顔を見下ろしていた。
「悪の首領も、あっけない終わりだったな。もっと激しい銃撃戦を期待していたのに」
「なに物騒なことを口走っているんだ。用が済んだら、長居は無用だ。さっさと行くぞ」
 鋭二は工場の外に向かって歩き出した。吉崎もカメラを持って、すぐに合流する。
「ちょっと待ってくれ。今、記念にこいつの写真を撮るから」
 小太刀はズボンのポケットから、カメラをとりだした。その時、渡辺の両目が突然かっと開かれた。
「なっ!?」
 小太刀は驚愕した。
 刹那、
 ズキューーーーーーン!
 けたたましい銃声が鳴り響き、小太刀は後ろに倒れ込んだ。
 左胸のあたりから、鮮血が溢れ出していた。
                                                                                                             第9回終了      
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☆★こいつはホントに名探偵!?★☆(第78回)

2006/02/26 23:04
7、因縁の決着(第8回)

「氷室か」
 やっとの思いで立ち上がった渡辺が、近くまで来た男の名前を呼んだ。
「申し訳ありません、ボス。あのままでは、ボスが危険と判断したので、手を出してしまいました」
 氷室と呼ばれた男は、渡辺に深々と頭を下げた。
「別に構わん。どうせここにはこいつ一人しかいないんだ。いくらこいつとやり合っていたところで、仲間が出てくる気配はなさそうだしな」
「……どうゆうことだ?」
 渡辺たちの会話を聞きとがめ、鋭二は恨みがましく渡辺を睨みつけた。
「わからんのか、沢村よ。俺はお前がここに来るのはわかっていた。だがお前のことだ。前回の失敗から、仲間を同じ場所に固めておくことはしないだろう。仲間は各地に散らばらせ、逃げたときの追っ手を撃退する事に使うはずだ。だから俺は自らおとりとなり、お前の仲間が出てくるのを待っていたんだ。本当は、俺がお前を窮地に立たせ、仲間が全員飛び出してきたところを氷室が撃つはずだったんだがな」
 渡辺は皮肉げに笑った。
「さすがのお前も、俺が仲間を隠している可能性まで頭が回らなかっただろう。お前の意識は、ずっと俺に向いていただろうからな」
「くっ……やられたぜ。おれとしたことが、こんな初歩的なミスをしてしまうとはな」
 鋭二は悔しげに歯がみした。腕が激しく痛い。
 銃の弾は幸い腕をかすめていっただけなのだが、それでも痛手であることにはかわりはない。人間誰しも、身体に痛みが走れば動きのキレが鈍くなるものである。相手が銃を持っている以上、状況は圧倒的に鋭二のほうが不利だった。
「さて、それでは尋問タイムといこうか。お前の組織はどこにある?」
 優勢に立った渡辺は、悠然と鋭二を睨みつけた。だが鋭二も気持ちだけはまだ負けていなかった。
「……知らない……がっ!」
 片膝立ちだった鋭二は顔を蹴られ、地面に倒れ伏した。そして撃たれた傷口を、渡辺は踏みつける。突き刺さるような激痛が、鋭二の全身を駆けめぐった。
「どうだ。痛いか、苦しいか。どうせお前は死ぬんだ。苦しい思いをして死ぬより、楽に死んだ方がまだましなんじゃないか? おとなしく吐いた方が身のためだぞ」
 鋭二は苦痛に表情を歪ませながらも、渡辺に屈することはなかった。
「……仲間を裏切るのだけは……死んでもごめんだね……」
「その減らず口が、いつまでたたけるかな。氷室」
 渡辺は氷室から、拳銃を受け取った。そしてその銃口を、鋭二の左肩に向ける。
「俺はお前を生かすつもりはない。だまり通すつもりならそれでもいいだろう。そのかわり、お前はたっぷり苦しい思いをして死ぬことになるぞ」
「……好きにすればいいさ」
「そうか」
 渡辺は引き金を持つ手に力を込めた。
                                                                                                             第8回終了
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☆★こいつはホントに名探偵!?★☆(第77回)

2006/02/24 18:59
7、因縁の決着(第7回)

 やがて、大きく息をつき、渡辺は話し出した。
「たいしたものだな、沢村。銃弾をかわしたあの動き。お前にあんな力があったとは思わなかったよ」
「すばしっこいのはもともとさ。お前のほうこそ、相変わらず強いじゃないか。最初にあれだけ完璧に殴られていながら、すぐに体勢を立て直して反撃までしてきたんだからな」
「それが格の違いというものだ。さっきのだって、ラッキーで一発殴られたにすぎん。このまま戦いを続ければ、勝つのは俺だ」
「そいつはどうかな。勝負というものは、終わってみるまで分からないものだぜ。おれも簡単にやられるつもりはない。おれはここから逃げ出すために、全力を持ってお前を潰す」
「なにを寝ぼけたことを。力の差は、もう歴然としているだろう」
「今のおれは、この前一撃で倒されたおれではない。油断してると、痛い目を見るぜ」
 鋭二は自分自身に気合いを入れ、足を踏み込むと同時に顔面へのパンチを放った。すると渡辺はすかさずクロスカウンターを狙う。以前、鋭二が倒された技だ。
しかし、
「なっ!?」
 渡辺のクロスカウンターが決まることはなかった。鋭二のパンチは、予想以上に速かったのだ。渡辺は出しかけた拳を引っ込め、慌ててガードに移行した。そのおかげで鋭二の拳はかろうじて受けとめることができたが、体勢が崩れた。
 そこから鋭二の猛攻撃が始まった。鋭二は顔面からボディまで、至る所を狙ってパンチを繰り出していく。まるでボクシングのラッシュを思わせる勢いだった。渡辺は最初に体勢を崩したのが災いして、それらを防ぐので精一杯だった。
 しかしいつまでもやられたままの渡辺ではない。体勢を徐々に元に戻し、反撃をしてきた。
「ぐっ!」
 突然の反撃に、鋭二は一瞬ひるんだ。だが鋭二も負けてはいない。やられても、すかさず反撃に移行する。鋭二は手技に加え、足技も巧みに使い出した。
 一進一退の攻防戦が始まる。鋭二がみぞおちを狙ってボディブローを放つと、渡辺は腕でガードし、逆の手で空いた鋭二の顔面にストレートを放つ。
 鋭二はそれをガードすると同時に、渡辺の足へとローキックで反撃する。渡辺はバックステップでそれをかわすと、再び前に踏み込むと同時に正拳突きを放った。
 鋭二はそれを手刀で払うと、その方向に一回転して裏拳を放つ。渡辺はその場にしゃがみ込み、鋭二の拳は渡辺の頭上を通り抜けていった。
 渡辺は身を起こしつつアッパーを放ち、鋭二は上半身を後ろに引いてやり過ごす。そして体勢を元に戻しながらストレートを放とうとするが、それよりも速く渡辺の肘が鋭二のみぞおちにめり込んだ。
「ぐふっ!」
 鋭二は痛恨のうめき声を上げた。渡辺は突き上げた拳が空を切ると同時に、さらに前に踏み込んですかさず肘を落としてきたのだ。
 鋭二はたまらず腹を押さえてうずくまった。渡辺は身体が下がった鋭二に向けて、再びアッパーを試みる。
 だが鋭二はかろうじてそれをガードし、致命傷を免れた。とはいえそれで危機が去ったわけではない。渡辺はいったん後ろに下がって鋭二と間合いを取ると、側頭部を狙って渾身の力を込めた回し蹴りを放ったのだ。
 鋭二はそれを受けとめようと腕を上げるが、回し蹴りの威力があまりにも重く、勢いを殺しきれずに吹っ飛ばされてしまった。
「うわっ!?」
 これには鋭二も予想外だった。だが何歩かよろけながらも、かろうじて踏みとどまる。そこに、渡辺の追い打ちがかかった。再び鋭二の側頭部を狙って、回し蹴りを放つ。
 鋭二は今度は吹っ飛ばされないようにと、しっかりとガードを固めた。刹那、ガードに使った鋭二の左腕にはしびれるような重い衝撃が走った。さっきとは違い今度はその場に踏みとどまったため、衝撃が逃げずに全部鋭二の腕に集中したのだ。改めて受けると、渡辺の蹴りの威力はそうとうのものだった。
 渡辺はすぐに足をおろし、次の攻撃に移ろうとする。だが鋭二が瞬時にそれに反応し、渡辺が足をおろす前にズボンの裾を掴んだ。余計なところから力が加わったため、渡辺は片足立ちのままバランスを崩した。
 そこに、
「ぐはっ!」
 鋭二の渾身の力を込めたストレートが、渡辺の顔面を直撃した。たまらず渡辺は後退していく。
 鋭二は攻撃を続けた。
 足を踏み込んでの正拳突き。みぞおちを狙ってのボディブロー。うずくまった渡辺の後頭部にかかと落とし。それらの連撃は、見事に全て命中した。渡辺は完全に倒れ伏す。
 しかし渡辺はなおも立ち上がろうとした。だいぶ動きは鈍っているものの、片膝を立ててくる。
「しぶとい奴だ。いい加減倒れろ!」
 鋭二は渡辺の顎先を狙って、足を思い切り蹴り上げた。渡辺はその蹴りに反応していない。
 刹那、
「がっ!?」
 苦鳴を上げ、鋭二は片膝をついた。
 右腕上腕部からは、真っ赤な血が滴り落ちている。傷口がとてつもなく熱い。鋭二は銃で撃たれたのだ。
 とはいえ、渡辺が撃ったわけではない。弾は後ろから飛んできた。
 鋭二が後ろを振り返ると、その奥からは一人の男が歩いてきた。渡辺と同じく、黒ずくめである。体格はがっしりとしていて、歳は二十五、六といったところだ。その男の手には、サイレンサー付きの拳銃が握られていた。
                                                                                                             第7回終了
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☆★こいつはホントに名探偵!?★☆(第76回)

2006/02/23 20:58
7、因縁の決着(第6回)

(なっ!?)
 鋭二は慌てて覗かせていた顔を引っ込めた。
 刹那、コンテナには火花が散った。銃声はしなかった。おそらくサイレンサーがついていたのだろう。
 突然の発砲に鋭二が動揺していると、渡辺が声を発した。
「もうそろそろ出てきたらどうだ? そこにいるのはわかっているんだぞ」
 どうやら鋭二の存在はばれていたようである。鋭二はおそるおそる、コンテナから顔を覗かせた。
 渡辺はこっちを見たまま悠然と構えている。ただ、これ以上銃を撃つようには見えなかった。
 鋭二はビデオカメラをコンテナの陰に置くと、覚悟を決めてそこから歩み出た。
「よくわかったな、渡辺」
「おれは人の気配を感じ取るのが得意でな。それに、お前ならどうせ今日のことをかぎつけてここに来ると思ってたよ」
「へえ、じゃあおれがここに潜んでいるのがわかっていながら、あえて取引を行ったというわけか。自分の悪行を反省して、警察に捕まる気になったのか?」
「なにを馬鹿なことを。お前の前で取引を行ったのは、見られたところでなんの問題もないからだ。なにしろ、お前はここで死ぬんだからな。飛んで火にいる夏の虫とはまさにこのことだ。だがお前を殺す前に聞いておく。他の仲間はどこにいる? そして、お前の組織の場所はどこだ?」
「そんな質問に、おれが素直に答えると思っているのか?」
「もちろん、思ってないさ」
 渡辺は唐突に銃を鋭二に向け、発砲した。だがその動きを読んでいた鋭二は、素早く横に跳んでそれをよけた。
 鋭二は渡辺に向け駆け出した。距離はまだだいぶある。だがそんなことはお構いなしだ。鋭二には驚異的な瞬発力がある。銃弾をかわすのに必要なものは、スピードだ。銃口を向けられてから、相手が引き金を引く前にその斜線上からいなくなればいいのだ。
「こしゃくな!」
 渡辺は立て続けに五発の銃弾を連射した。しかし鋭二はゲームセンターで小太刀の光線をよけた時のように、華麗なフットワークで渡辺の銃弾をかわし続けた。そして、
 カチッ! カチッ! カチッ!
「くっ、弾切れか!」
 渡辺は拳銃を投げ捨てた。そのころには鋭二はすぐ目の前に迫っていた。次の瞬間、
「がはっ!」
 渡辺は顔面を思いきり殴られ、後ろへと吹っ飛んでいった。銃を捨てるのが遅すぎたがゆえに、鋭二のスピードに乗った攻撃をさばけなかったのだ。
 だが渡辺は倒れなかった。五、六歩後ずさったところで、かろうじて踏みとどまった。そしてすぐに構えを取り、鋭二の追い打ちに備えた。同時に鋭二のストレートが襲いかかる。鋭二もチャンスを逃せば渡辺を倒すことが難しくなるということがわかっているのだ。攻撃の手を休めるわけにはいかない。
 しかし渡辺に間一髪というところで首を横に振られ、かわされてしまった。鋭二の拳は渡辺の顔の横を通り抜けた。そこに渡辺の膝蹴りが放たれた。ねらいは鋭二のみぞおちである。
「くっ!」
 鋭二はすかさず後ろに跳び、その膝をやり過ごした。そしてさらに渡辺と距離を取り、構え直す。
 両者はにらみ合い、しきり直しといった形になった。
                                                                                                             第6回終了
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☆★こいつはホントに名探偵!?★☆(第75回)

2006/02/22 18:38
7、因縁の決着(第5回)

 次の日曜日、時刻は午前五時少し前。鋭二は計画実行のため、廃工場の倉庫付近にいた。
 この工場は雑木林に囲まれたところに位置しており、民家の数もまばらで、人気もそれほどない。工場が潰れてもほったらかしになっているのは、そんな悪条件の地にあることも原因なのかもしれない。
 鋭二の片手には、ビデオカメラが抱えられている。すぐ側にはドラム缶やコンテナなどがいくつも積んであったりして、鋭二はそこに身を潜めていた。倉庫からの距離はそれなりに離れていて、角度も悪くない。
 鋭二の予想通り倉庫前で取引が行われるのであれば、鋭二の隠れ場所はベストポジションだった。しかし背後は塀になっているので、見つかれば後ろに逃げられないといのが欠点である。
 鋭二は過去のことを思いだしていた。鋭二が渡辺の麻薬取引現場に張り込んだのは、これで二回目である。
 一度目の時は、組織の仲間が一緒にいた。時刻は深夜一時。あたりは真っ暗で、前がほとんど見えない状態だった。鋭二たち自身も完璧に隠れたつもりだった。物音一つたてた覚えもない。
 しかし、渡辺は暗闇の中自分たちの存在に気づいた。そして、仲間が殺された。
 今回は以前と違い、早朝に行われる。辺りはやや明るいといったところで、視界条件は悪くなかった。暗闇に紛れても見つかってしまうのなら、明るければなおさら見つかる確率は高い。
 鋭二はその時に備え、動きやすい丈夫なバトルスーツを身につけているが、そんなものは気休めにもならなかった。おそらく渡辺は、今度は拳銃を携帯してくるだろう。バトルスーツ自体には防弾性はない。撃たれれればおしまいである。
 そう考えると、緊張せずにいられなかった。顔を隠すために巻き付けた布は、冷や汗で濡れていく。鋭二は今、自分が見つかる可能性ばかりを考えているのだ。
 とその時、東側から歩いてくる人影が見えてきた。鋭二の緊張感は、さらに増した。それは黒いスーツに身を包んだ、渡辺だった。渡辺は一人でここに来たようだ。手にはアタッシュケースが握られている。おそらく中身は麻薬だろう。
 鋭二の予想通り渡辺は倉庫の前で立ち止まると、くるりと背を向け、自分が歩いてきた方を見つめた。おそらく相手を待っているのだろう。倉庫の西側は塀になっているので、そちらから人が来るとは考えにくい。倉庫と塀の間には人が一人通れるぐらいの隙間があるのだが、わざわざそんな狭い道を選んでくる人間なんていないだろう。
 実際、取引相手らしき人物は、それから数分して渡辺が通ってきた道と同じところを歩いてきた。相手の数は三人。渡辺と同じく、黒いスーツに身を包んでいた。手にはアタッシュケース。おそらく中身は金だろう。
 渡辺と男三人は対峙し、取引が始まった。それに合わせ、鋭二も緊張した面もちでビデオを回す。望遠モードになっているので、その様子はよく見ることができた。
 鋭二の位置も角度がよかったため、連中が死角になることはなかった。周りが静かなので、会話もよく聞こえてくる。その内容は、いかにも取引を感じさせるものだった。
 渡辺たちはお互いのケースの中身を確認し合った。鋭二の予想通り、渡辺のケースには麻薬らしきもの。相手のケースには金がびっしり詰められていた。そしてそれは、交換された。取引成立である。
 相手のグループは用件が終わると、さっさとその場をあとにした。渡辺はその場に立ち止まり、その背中を静かに見送っていた。
 鋭二は相手に気づかれることなく一部始終をビデオに収めることができ、ほっと胸をなで下ろした。あとは渡辺が去った後に自分もここから抜け出して、証拠のテープを警察に届けるだけである。
 しかし、渡辺はいっこうにその場を動こうとはしなかった。鋭二は怪訝に思い、渡辺の動向に注目していると、渡辺はおもむろに上着の中へと手を入れ、拳銃を取りだした。
 そしてその銃口を、鋭二が隠れているコンテナのほうへ向けた。
                                                                                                             第5回終了
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☆★こいつはホントに名探偵!?★☆(第74回)

2006/02/21 19:08
7、因縁の決着(第4回)

 みんなと別れた次の日、夜も深まったころ鋭二は黒田博士の家へと訪れた。
「こんな時間に、なんの用じゃ?」
 黒田は相変わらず無愛想にそう言った。
「夜分に申し訳ありません。話の前に……リティちゃんはもう休まれましたか?」
「なんじゃ。リティに用があるのか? じゃったら今から起こしてもよいが」
「いえ、そうじゃないんです。リティちゃんには、聞かれたくない話ですから」
 鋭二はポケットから二枚の封筒を出し、差し出した。黒田はそれを凝視し、あきれたようにため息をついた。
「……どうせこんなことじゃろうと思ったわ。お前があっさりと自分の主張を翻したんじゃからな。一度納得したふりをしてみんなを裏切る。お前らしいやり方じゃ」
 鋭二の意図を察した黒田は、皮肉げに言った。鋭二は自嘲の笑みを浮かべる。
「やはり昨日のことはリティちゃんの記憶を通して、分かっているんですね。でしたら話は早いです。みんなをだましたことになりますけど、おれはもう誰の力も借りるつもりはありません。リティちゃんと二人分、今回の仕事の協力料、受け取ってください」
 すると黒田はその封筒を受け取った。
「仲間を裏切ってまで一人で戦うことを決意したんじゃ。そこまで意志が固いのなら、余計な介入は無用じゃな」
「ありがとうございます、黒田博士」
「それで、これからどうするつもりじゃ? 本当はもう、打開策は考えておるんじゃろ? 万が一のことを考慮するお前じゃ。切り札を残していないと言うことはなかろう」
 黒田の指摘に、鋭二は苦笑した。
「さすがですね。そこまでお見通しというわけですか。おっしゃるとおり、おれには最終手段が残っています」
「麻薬取引現場を押さえること、じゃな?」
「そうです。短期間で奴らを潰すには、それが一番手っ取り早いですからね。今度の日曜日の午前五時に、奴らは山奥の廃工場でそれを行うんです。おれはその場に張り込み、決定的瞬間をビデオに収めようと思ってます」
「張り込みは過去に一度失敗しとるんじゃろ? 本当に大丈夫なのか?」
「……正直、成功率は五分五分といったところです。できればもうこんなことはしたくなかったんですけど、もはやそんなことを言っていられる状況じゃないですからね。みんなの命もかかっているんですから」
「……沢村。わしはお前がどうなろうと知ったことではないが、お前が死ねばリティが悲しむ。見つかって、殺されるようなことはないようにな」
「わかってますよ。それじゃもう、おれは失礼させてもらいます。結果はその日のうちに報告しますから、待っていてください」
 鋭二は最後に黒田に深々と一礼し、その場を後にした。
                                                                                                             第4回終了
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☆★こいつはホントに名探偵!?★☆(第73回)

2006/02/20 21:00
7、因縁の決着(第3回)

「どうゆうつもりや沢村! 事件はまだ解決しとらんやないか! あげく、俺らは命を狙われとんのやど! それやのに、ここで引き下がれるわけないやないか!」
「そうだぜ鋭二。遠慮することはない。おれは最後までつき合うぜ」
「あたしも、最後までお兄ちゃんのお手伝いするよ」
 吉崎に続き、小太刀、リティもまだ仕事を続ける意志を示した。猛は黙りこんでいる。
 鋭二は猛には構わず、みんなに言った。
「せっかくだけど、そうゆうわけにもいかないよ。さすがにここからは素人の手には余る。もはや渡辺を潰すためには、かなりの無茶をしないとならないだろうからな。みんながいたところで、無駄に命を落とすだけだ」
「だからなんやっちゅうねん! そんなんでびびって逃げるようなら、最初から手なんか貸しとらん! どのみちお前がやられたら次は俺らの番なんや! 自分の命がかかった戦いを、人任せになんてしてられるか!」
 吉崎は引き下がらなかった。真剣な顔で訴えかけている。
 鋭二は説得を続けようとしたが、そんな吉崎を見て無駄だと悟った。鋭二はあきらめたように嘆息した。
「……わかったよ。みんながそのつもりなら、おれはもう拒んだりしない。協力、お願いするよ」
 すると吉崎は笑みを浮かべた。
「最初からそう素直にしてればよかったんや。こっちこそ、もうしばらくよろしく頼むで。これを受け取るのは、まだ後のことやな」
 吉崎は現金入りの封筒を鋭二に差し出した。
「おれも返すぜ。これを受け取るにはまだ早いからな」
 小太刀も封筒を鋭二に渡した。だが猛はまだ動きを見せなかった。うつむいたまま、悩んでいるかのように顔を歪ませている。
 そんな猛に、鋭二は声をかけた。
「なにを迷っているんだ猛。まさか、お前までまだ仕事を続ける気じゃないだろうな? らしくないぞ。こうなったのもおれのせいなんだ。お前はおれに責任をとるよう、責めてればいいんだよ」
 鋭二にそう指摘され、猛は苦笑いを浮かべた。
「いくら俺でも、こんな時にお前を責めるほどひどくはねえよ。……すまない、沢村。俺には他のみんなと違って、戦う技術を持っているわけではないんだ。俺はここで、下ろさせてもらう」
「ああ、そのほうが賢明だ。お前には、事が終わりしだい連絡を入れる。それと言い忘れていたことがあるんだけど、お前は事件が解決するまで外出を極力控えてもらえないか? お前は素顔を見られているんだ。一番狙われる可能性があるとすれば、猛だろう。窮屈な思いをすると思うけど、我慢してもらいたいんだ」
「分かった。気をつけるよ」
 ここで鋭二は吉崎たちに視線を戻した。
「それじゃ早速作戦の検討といきたいところなんだけど……おれはこれから裏世界の情報屋のところに行って、渡辺の動きについて調べてもらおうと思ってるんだ。それによって、おれは出方を決めようと思う。みんなも、それでいいかな?」
「てことは、その情報が来るまで待ってろっちゅうことなんか?」
「そうゆうことになる。悠長なことをしている暇はないんだけど、でもおれは危険を最小限に抑える方法をとりたいんだ。そのためには、時間をある程度かけなければならない」
「お前がそう言うんやったら、かまわんで。でも、作戦がたったら絶対連絡入れろよ」
 吉崎は念を押すように言った。
「大丈夫、約束するよ。それじゃ今日のところは解散だ。また、何日か後にな」
 鋭二のその言葉を聞いて、みんなはそれぞれの帰路についた。
                                                                                                             第3回終了
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☆★こいつはホントに名探偵!?★☆(第72回)

2006/02/19 00:03
7、因縁の決着(第2回)

「おれは以前、とある裏の組織にいたんだ。その組織の目的は、裏世界で暗躍する悪人たちを取り締まること。といっても、やっていることは悪人たちのしっぽを掴んで、表の警察に突き出すということだけ。おれたちは秘密の組織だから、あまり目立たないようにしているんだ。渡辺金融のことを調べられたのも、組織のおかげさ。仮にいうなら、その組織はおおかた秘密警察といったところだ」
「秘密警察だと? なに言ってるんだ沢村。話がどんどん変な方向に行っているぞ」
 猛はますます困惑気味に口を挟んだ。
「別に、無理に信じなくてもいい。でも、おれは嘘は言っていない。その組織があるがゆえに、おれたちは奴らに狙われる可能性がある。大変申し訳ないが、みんなの意思には関係なくな。だけど、おれはみんなに危害を加えさせる気はない。責任はちゃんとおれがとる。みんなにはただ、万が一おれが倒れたときのために、そういうことが起こっているというのを頭に入れて置いてもらえればいいんだ」
「……マジなのか、沢村?」
 さすがに猛も鋭二の真面目な態度に、鋭二の話を信じ始めていた。
「ああ、そうだ」
 鋭二はきっぱりと断言した。
「でもそんな組織があるんだったら、なんで潜入捜査の時に俺たちみたいな素人を使ったんだ? お前の言う組織の人間を使った方が、よっぽどよかったじゃねえか」
「あいにくおれはもうその組織を抜けたんだ。仲間を殺されたことをきっかけにな」
「えっ……」
 猛は気まずそうな顔を浮かべた。
「その仲間を殺したっちゅうのが、あの渡辺なんやな?」
 吉崎は夕べ渡辺が鋭二に言っていたことを思い出し、尋ねた。
「そうだ。前にも話したと思うけど、おれは一度渡辺の取引現場を見た時、実は仲間が二人一緒にいたんだ。でも見つかって、逃げ切ったのはおれだけだった。……仲間が自らを犠牲にして、おれが逃げるだけの時間を稼いでくれたんだ。その二人はおれにとって大切な人間だった。仲間を失ったショックでおれは組織から抜けたけど、でも渡辺のことはどうしても許せなくてね。だから今でも、渡辺のことを追いかけているんだ」
「お前が以前俺に言った思い入れっちゅうのは、このことやったんやな。でも、これからどうするんや? さっきお前は責任をとるっちゅうたけど、渡辺をどうにかする方法はあるんか?」
「敵の本拠地に乗り込んで、やられる前に奴らを潰すっていうのはどうだ?」
 小太刀は口を挟んできた。
「どうせなにもしなくても向こうから襲ってくるんだろ? そんなの、わざわざ待つことはないさ。逆にこっちから奴らのアジトに乗り込んで、奇襲をかければこっちのほうが有利に戦えるはずだ。戦いとは、何事に置いても先手必勝さ」
 小太刀はまるでこれからゲームをしようというかのように、簡単に言い放った。口端に笑みまで浮かんでいる。この状況を、楽しんでるみたいだ。
 これに対し猛がとがめようとするが、その前に鋭二が口を出した。
「武力で奴らを潰すのだったら、組織がとっくにそうしている。おれたちの目的は、悪人に死の制裁を与えることではないんだ。あくまでも、法の下での裁きを与えることだ。真にやむを得ない場合を除き、相手に小さなケガを与えることも禁じている。それが原因で仲間がむざむざ殺されてしまったんだけど、おれはその方針を守るつもりだ。組織を抜けた今でもな。死んだ仲間も、力で渡辺を潰すことは望んでいないだろうし」
「でも、それじゃ他にどうするつもりだ?」
 小太刀に聞き返され、鋭二は答えに詰まった。
「……正直、まだいい方法は考えていない。でも、近いうちに必ずいい案を出して、事件を解決してみせる。説得力はないかもしれないけど、みんなには心配しないで待っていてほしいんだ」
 鋭二はそう言って席を立ち、クローゼットの中から三枚の封筒を取りだした。それをリティを除くメンバーにそれぞれ渡す。
「なんだこれは?」
 猛は怪訝な面もちで尋ねた。
「それは今回の協力料さ。最初に約束した通り、二十万円入ってる。……リティちゃんには、子供がこんな大金を持ち歩くのはまだ早いから黒田博士のほうに渡しておくね」
「ちょっと待て沢村。これはどうゆうことや?」
 吉崎は険悪な視線を鋭二に向けた。
「みんなの仕事は終わったから、その報酬を払っただけのことだ。今まで、本当にありがとう。みんなとの仕事は失敗したけど、協力してくれたこと、本当に感謝してるよ」
 鋭二がそう言うと、吉崎はテーブルをどんっと叩いた。
                                                                                                            第2回終了
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☆★こいつはホントに名探偵!?★☆(第71回)

2006/02/16 22:24
 7、因縁の決着(第1回)

 再び病院に入院した鋭二は、驚異的な回復力で昼には退院手続きを済ませていた。周りには、猛や吉崎といった鋭二が集めた仲間が全員そろっている。みんなは鋭二を病院に預け、そのままそこで一夜を過ごしたのだ。
 鋭二は気絶したあとのことをみんなから聞かされ、助けてもらったお礼と、迷惑をかけてしまったことに対する謝罪の言葉を贈っていた。
 今彼らは病院のロビーにいる。昼のニュースを見ているのである。夕べの渡辺金融の一件で、警察側がどこまで犯人である自分たちの情報をつかんでいるのかを調べるためだ。
 もし何らかの理由で自分たちの顔がわれており、すでに指名手配されていようものなら、今後の行動は考えなければならない。迂闊に外を出歩いたりするのは、自殺行為となってしまう。
 しかし、それに関する情報は報道されることはなかった。ニュースを見終わった後、鋭二は硬い表情を浮かべ、話したいことがあるからとみんなとともに事務所へと戻った。みんなは緊張の面もちで、鋭二の自称探偵事務所へと移動することとなった。


 鋭二は昨夜と同じように、畳敷きのアパート部屋で一つのテーブルを囲むようにみんなを座らせた。みんなが鋭二に注目し、重々しい空気が漂う中、鋭二はその口を開いた。
「……さっきのニュースを見てわかった通り、昨夜おれたちがやらかした事件のことはいっさい触れられていなかった。たいてい、夜中に起きたことなら昼間にはニュースになるものだ。事件が大きければなおさらな。渡辺金融は大手企業。そして警備員大勢に危害を加えた。はっきり言って、これは大事件の部類に入る。それなのに、なぜニュースになっていないのか。おそらくは、渡辺が事件をもみ消したからだ」
「もみ消しやと? なんでまたそんなことを」
「渡辺としては、自分の会社に警察を踏み入れさせたくなかったのだろう。そこに雇われていた警備会社側としても、自分たちの威信を守るためには今回の件はうやむやにしたいはずだ。事件をもみ消すということは、向こうにとっても都合のいいことなんだ」
「だったら、もうなにも心配することはねえんじゃないか? これで俺たちは警察に追われることはないんだから」
 猛が楽観的に言うと、鋭二は首を横に振った。
「ところが、事態はそんな簡単ではない。重要なのはここからだ。これはおれの推測なんだけど、渡辺が事件をもみ消したのはもう一つの理由があるからなんだ。それは……おれたちの抹殺さ」
 鋭二の言葉に、猛は凍りついた。
「な、なんだって……!?」
「不幸なことに、奴はおれたち全員が組織の人間だと思いこんでいるんだ。奴はまずおれたちを捕まえ、拷問にかけて組織のことを吐かせようとするだろう。どうゆうわけか、奴は組織のことを知りたがっていたからな。そして用がなくなれば処刑さ」
「ちょ、ちょっと待て! 組織って、一体なんのことなんだ!?」
 唐突な言葉に、猛は困惑した。昨夜の吉崎と同じ反応だ。吉崎も自然と鋭二に注目する。小太刀も興味を惹かれたのか、鋭二に視線を向けた。
 鋭二は真剣な面もちで話し出した。
                                                                                                             第1回終了
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☆★こいつはホントに名探偵!?★☆(第70回)

2006/02/08 23:15
6、明かされる真実(第16回)

「くっ!」
 吉崎はリティの身の危険を案じ、自らの恐怖を振り払って飛び出した。だが到底間に合わない。
 渡辺の腕がリティの小さな頭を掴んだ。その時、
「邪魔しないでっ!」
 リティは渡辺の腕を振り払り、自分の小さな拳を渡辺のみぞおちにめり込ませた。
 いくらみぞおちにあたったとはいえ、子供の腕力なんてたかがしれている。ましてや鋭二のタックルを防いだ渡辺の腹筋なら、そんなものが通用するはずがなかった。
 しかし、
「ぐはっ!?」
 渡辺は身体をくの字に折って、その場に崩れ落ちた。予想もしなかった激痛が、自分の腹を襲ったのだ。
(な、なんなんだ。なんでこんな子供に、これほどのパンチが打てるんだ。一体、何者なんだ?)
 渡辺は腹を押さえたまま、ただとまどうばかりだった。それは吉崎も同じだった。思わぬ光景に、足を止めてア然としている。
 リティはそれ以上渡辺には取り合わず、すぐさま鋭二のそばに駆け寄った。
「大丈夫、お兄ちゃん!」
 リティは心配そうな顔で鋭二のことをのぞきこんだ。しかし鋭二の反応はない。いくら身体を揺さぶっても、呼びかけても、今度ばかりは意識を取り戻すことはなかった。
「待っててね、お兄ちゃん。今、病院に連れて行ってあげるから」
 リティは鋭二を仰向けにさせると、両膝の下に自分の腕を差し込み、自分よりも遙かに大きい鋭二の身体を抱き上げた。
 するとその背中を、苦悶の表情を浮かべた渡辺が襲いかかった。
「そうは……させるか!」
「危ない、リティ!」
 ここで我に返った吉崎が、すぐに助けに入った。無防備な渡辺の背後から、吉崎の拳が後頭部にたたき込まれる。渡辺は再び倒れ込んだ。
「ぐっ……貴様!」
 しかし渡辺はなおも立ち上がろうとした。不意打ちを食らわした吉崎に、怒りの形相を浮かべている。
「な、なんちゅう野郎や。あんなにきれいに入ったのに。リティ、逃げるで!」
 恐怖した吉崎は、それ以上渡辺に関わるのを避け、その場から逃げ出した。リティも続けて走り出す。
「まっ……待て……!」
 渡辺は吉崎たちを追いかけようとするが、彼らが視界から消えたとたん、力つきたようにぐったりと崩れ落ちた。


 トイレの窓から外に出てみれば、三人ほど地面に倒れている警備員を発見した。リティたちはそれらの横を通り抜け、出口へと向かう。途中、銃を片手に持った小太刀と鉢合わせした。
「スーちゃん」
「お、どうやらそっちも無事任務を終えたようだね。こっちも無事猛は助け出したよ。ところで、鋭二はどうしたんだ?」
 小太刀はリティの腕のなかで気絶している鋭二を、心配そうにのぞき込んだ。
「敵の中にめちゃくちゃ腕の立つ奴がおって、やられてしもうたんや。そんなことより、ここは早く逃げるのが得策や。ここで敵が増えたら厄介やからな」
 吉崎は説明しつつ、みんなを促した。
「それもそうだな。いくぞ」
 四人は出口に向かって走り出した。やはり外にも、倒れている警備員がいた。しかもその数はそうとうのものだった。
(これだけの数の警備員をこんなにして、大丈夫なんか俺らは……)
 吉崎は自分たちのやったことを改めて実感し、行く末の不安を感じていた。
 新手が来ることもなく無事に外まで脱出できた四人は、少し離れたところに止めておいた車までたどり着いた。鋭二を後部座席に乗せ、続いてリティ、吉崎が乗り込む。
「どうしたんだ、沢村!?」
 ひとあし先に助手席に乗り込んでいた猛は、鋭二の様子を見て驚愕した。吉崎は小太刀にしたのと同じように、事情を話した。
「とりあえず、病院に向かった方が良さそうだな」
 運転席に乗り込んだ小太刀は、そう言いながらエンジンをかけた。キーは刺さったままだったのだ。
「ところで茂。お前、車の免許は持っとるのか?」
 吉崎は不意に気になって、何気なく尋ねた。すると小太刀は、自信を持って答えた。
「もちろん、無免だ」
「なんやとっ!?」
「……なんていうのは冗談だ。ちゃんと持ってるから安心しろ」
 小太刀はこともなげに言って、車を走らせた。この時、本気でこいつを殴ってやろうかと思った吉崎だった。
                                                               6、明かされる真実 終了
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☆★こいつはホントに名探偵!?★☆(第69回)

2006/02/06 19:46
6、明かされる真実(第15回)

 それでもリティは何度も呼びかけ続けた。身体も激しく揺さぶってみる。
 それが功を奏し、鋭二に反応が見られた。呻き声を上げながら、意外にも早く意識を取り戻した。
「リ……ティちゃん?」
「お兄ちゃん!」
 鋭二はぼうっとしたようにリティの名を呼ぶと、ゆっくりと身を起こした。とたん、顔に激しい痛みが走る。鋭二は思わず顔を手で押さえた。
「ほう、もう意識を取り戻したか。しぶとさだけはあるんだな」
 渡辺は鋭二を見下ろし、嘲笑を浮かべた。それにより、半ばもうろうとしていた鋭二の意識は完全に復活した。
「渡辺……。そうか、おれはたった今やられたばかりだったんだな。全く、こんなに強かっただなんて予想外だぜ」
 鋭二は毒づくと、ふらつきながらも完全に立ち上がった。
「なんだ。まだやるつもりなのか?」
「当然だ。おれはこのまま引き下がるわけには行かないんでね」
 鋭二は頼りない物腰で、構えを取った。その姿はあまりにも弱々しい。どう見ても、もう戦える状態ではなかった。
「もうやめろ沢村! 今のお前が、あいつに勝つのは無理や。あいつはただ者やない。ここは逃げた方が得策や。なにか、逃げる道具はないんか?」
 吉崎は鋭二に訴えかけた。吉崎も渡辺のパンチを見たときに、相手の強さを悟っていたのだ。クロスカウンターだなんて、ボクサーでも簡単にできる技ではない。悔しいが、吉崎の手にも負えない相手だろう。
 だが鋭二はゆっくりとかぶりを振った。
「あいにく、あいつに通じそうな逃げ道具はない。……確かに、今のおれでは奴には勝てないだろう。だから、せめて二人だけでも逃げてくれ。おれが、その時間ぐらいは稼いでみせるから」
「まさか……そのためにお前はまだ戦う気なんか? せやけど、お前だけ置いて逃げるなんて俺には……」
「自らを犠牲にし、仲間を逃がすというわけか。懸命な判断だな。だが、おれは誰一人として逃がすつもりはない」
 渡辺は悠然と言い放った。吉崎は押し黙る。渡辺は徐々に近づきつつあった。
「吉崎、頼む。おれの言うことを聞いてくれ。このままじゃ全滅だ。迷っている暇はない。お願いだから、すぐに逃げてくれよ」
 鋭二はそう言うと、再び渡辺へと向かっていった。吉崎が制止の声を上げたが、お構いなしだ。
 渡辺は足を止め、鋭二を迎え撃つ構えを取った。鋭二は間合いが詰まると、さっきと同じように勢いに乗せ拳を突き出す。
「馬鹿の一つ覚えだな」
 渡辺は嘲ると、それと同時に再びクロスカウンターを狙ってタイミングよく拳を繰り出した。これで完全にとどめとなるはずだ。
 しかしその時、鋭二は瞬時に身を低くした。渡辺の拳は鋭二の頭上を越えていく。
「なっ!?」
 気づいたときにはもう遅い。鋭二の拳はフェイントだったのだ。刹那、渡辺の腹部には重い痛みが走った。鋭二がラグビー選手さながらのタックルを決めてきたのだ。
「がはっ!?」
 これには渡辺も意表をつかれ、思い切りバランスを崩した。上体が後ろに倒れ、吹っ飛んでいく。
 しかし、渡辺は人並みはずれた脚力で、すんでのところで踏みとどまった。
「なっ!?」
 今度は鋭二が意表をつかれる番だった。鋭二の中では、今の一撃で渡辺を地面に倒すはずだったのだ。ストレートを出すと見せかけ、完全に虚をついたはずだった。にもかかわらず、渡辺は踏みとどまってしまった。鋭二は渡辺の腰にしがみついたまま、固まってしまう。
「……捨て身の攻撃とはやるじゃないか。でも惜しかったな。お前が万全の状態だったら倒せたかもしれないが、ダメージの残っている今のお前じゃ、少々力不足だったな」
 次の瞬間、鋭二の腹部に渡辺の膝蹴りがたたき込まれた。さらにとどめとばかりに頭には肘が落とされる。
 重い打撃を続けて受け、鋭二はその場に崩れ落ちた。
「お兄ちゃんっ!」
 リティは鋭二のもとに駆け寄ろうとした。しかしすかさず吉崎が後ろから押さえつける。
「駄目やリティ! 今あっちに行ったらあかん!」
「放して! 放してよまーくん!」
 リティは束縛を振り切ろうと暴れるが、吉崎も必死になって放さない。
 渡辺はそんな二人には目もくれず、足下に転がる鋭二のポケットからフロッピーディスクを取りだした。
「このフロッピーは返してもらうぞ。お前らが欲しがっているデータがここに入っているわけじゃないんだが、それでも我が社にとっては重要なものなんでね」
 鋭二は無言だった。すでに気を失っているのだ。
「さてと」
 渡辺は鋭二が気絶していることを見て取ると、吉崎たちに視線を向けた。吉崎は目があったとたん、びくっと体を震わせた。
「時間稼ぎにもならなかったな。次はお前たちの番だ」
 渡辺は冷酷な笑みを浮かべながら、吉崎たちのほうに歩みだした。吉崎は恐怖を感じ、身を硬直させる。
 そのスキをついて、リティが吉崎の拘束を振りほどいた。
「あ、こらリティ!」
 吉崎の声は無視し、リティはまっすぐに鋭二のもとに駆け出した。だがその前には渡辺がいる。
「ほう、そっちから向かってくるか。いい度胸だ。言っておくが、俺は子供にも容赦はしないぞ」
 渡辺は悠然とした態度で、向かってくるリティを捕まえようと腕を伸ばした。
                                                                                                           第15回終了
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☆★こいつはホントに名探偵!?★☆(第68回)

2006/02/05 23:49
6、明かされる真実(第14回)

「また会ったな、沢村」
「渡辺……」
 鋭二は呻くように呟いた。
「渡辺って……それじゃこいつが例の?」
 吉崎は鋭二に尋ねた。だが鋭二は黙り込んでなにも答えなかった。すると、渡辺と呼ばれた目の前の男が続けた。
「相変わらず顔を隠しているようだが、俺の目はごまかせないぞ。俺は相手の体格と目を見れば、たいていは記憶することができるんだ。またのこのこそっちから俺の前に現れてくれるとはな。捜す手間が省けたというものだ。そこにいるのは組織の仲間か? 新たな仲間を引き連れて、以前殺された仲間の敵討ちといったところだろう。ご苦労なことだな」
「ぐっ……!」
 鋭二は一瞬恐ろしい形相を浮かべるが、すぐに平静を取り繕った。
(なんや? 組織? 殺された仲間? 一体なんのことなんや?)
 一方で渡辺の言葉を聞きとがめた吉崎は、話の内容がつかめず一人とまどっていた。リティも首を傾げて鋭二と渡辺を見比べている。
 渡辺は肩をすくめて見せた。
「まあ、いいだろう。なんにしても、お前たちはここでおしまいだ。外の二人は見逃してしまったからな。代わりにお前らには捕虜になってもらう。お前らの組織のことを、全て話してもらうぞ」
「外の二人を見逃した? どうゆうことだ」
 尋ねると、渡辺は自嘲気味に話した。
「さすがにあの射撃手を相手に素手で戦うのは分が悪いからな。不本意ながら、やり過ごさせてもらった。本来なら拳銃で撃ち殺したいところだったんだが、ここは俺の会社なんでね。神聖な職場を、血なんかで汚したくはないからな」
「へえ、お前がそんなことを気にするとは思わなかったぜ」
 鋭二は小太刀たちが無事だと言うことに安心しつつ、皮肉を漏らした。
「会社を愛しているなら、それぐらいの気配りは当然のことだ。お喋りはここまでだ。覚悟はいいな」
 渡辺は構えを取った。すでにやる気は十分のようだ。
 鋭二は肩をすくめた。
「どうやら、やるしかないようだな。相手に余計な危害を加えることはおれたちのやり方ではないんだが、もうそんなことは言ってられない。同じ失敗は二度としたくないからな。吉崎、リティちゃんを連れて、別ルートから逃げてくれ。ここは、おれが何とかするから」
 鋭二はおちついた声で、指示を出した。だが渡辺に向けたままの視線はいつの間にか殺気だっていた。
「なに言ってんのや沢村。お前を置いて、逃げられるわけないやろ。遠慮はすんな。俺も奴を倒すのに協力したる」
「いや、お前は手を出さないでくれ。あいつはおれの手で倒したいんだ。こんな手段は使いたくなかったが、あいつには返したいカリがあるからな。大丈夫。おれは負けたりはしないから」
「ずいぶんと余裕をかましているんだな。素手なら俺に勝てるとでも思っているのか?」
 鋭二の言葉を聞きとがめた渡辺は、挑発するように言う。
「お前こそ、おれをなめてると痛い目に遭うぜ。あの時は逃げ出したけど、おれは別に弱いわけではないんだ。いくぞ!」
 気合いと共に、鋭二は飛び出した。勢いを乗せ、矢のような素早いパンチを繰り出す。
 しかし、
「甘いわ!」
 鋭二が顔面を殴りかかった瞬間、渡辺もストレートを繰り出した。それは見事なまでのクロスカウンターとなり、鋭二の顔面に直撃した。
「がはっ!」
 一瞬の出来事だった。通常よりも威力を倍加させるカウンターパンチにより、鋭二は大きく吹っ飛んでいった。廊下の上を、数十センチ滑っていく。そしてぐったりと動かなくなった。
「口ほどにもなかったな……」
 渡辺は嘲るように吐き捨てた。
「お兄ちゃん!?」
「沢村!?」
 あまりのことに我を失っていたリティと吉崎は、自分の後ろまで転がっていった鋭二に慌てて駆け寄った。
「お兄ちゃん! しっかりして! 目を開けてよ、お兄ちゃん!」
 鋭二は動かなかった。リティの呼びかけに対する反応はない。あまりにもきれいにカウンターが決まりすぎたために、わずか一撃で気を失っていた。
                                                                                                           第14回終了
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